『三木露風評伝‐求道の詩人の生と作品』関連メッセージ
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             電子書籍事始め
                             福嶋朝治

書影 『三木露風評伝─求道の詩人の生と作品』を書いた。三木露風は象徴派詩人を標榜し、明治末期から大正にかけて北原白秋と共に大活躍した詩人である。しかし、不幸なことにいまだ彼の伝記は世に出ていない。そこで露風研究者の義務感に駆られて執筆した次第である。
 初めはワードで作成して、ホームページ『三木露風文学館』に掲載していたが、途中から紙の本で出版しようと思い、ホームページへの転送をやめていた。そのうち紙の本で世に送り出しても、あまり売れずに書庫に在庫が積まれた状態をイメージしたら、気力が失せた。
 そんな時読んだ翻訳書がはじめ電子ブックで出版し、後に紙の本にしたと「あとがき」に書いてあった。「そうだこの手で行こう!」と決めた。アメリカでは電子書籍が紙の本を凌駕していて、学術論文のほとんどは今や電子書籍だという。
 ネットでKindleを検索し、のぞいてみた。Kindleの利用規約をダウンロードしたら20枚近くなった。ざっと目を通したがとてもめんどくさそうだった。そこで近隣の図書館から電子ブックの関係書を数冊借りて読んだ。
 『電子書籍奮戦記』(萩野正昭)は、内容が電子出版奮戦記で、書籍作成奮戦記ではなかったので当てが外れた。その他は読み手側や売り手側の情報が主なものと作り手側の情報とに分かれた。その中から『いちばんわかりやすい電子書籍の本』(山本高樹ら)、『電子書籍の作り方 売り方』(加藤雅士)を選んで参考にした。
 まず手始めにSigilという作成無料ソフトをダウンロード。短文を作成してみた。作成上は問題がないが、作成後の書籍の管理ソフトが必要なことがわかり、頓挫。一時棚上げにして次に試したのが、Puboo。「作成と販売をする仕組みが整っている」無料サービスとあった。「日本国内のサービスなのでサポートや決済の面で安心だ」という。
 パブーのサイトのトップページからアカウントのIDなどを入力し、新規ユーザー登録を完了。「本を作る」をクリックし、タイトルなどを入力する。以前このサイトに掲載させていただいた「三木露風 童謡赤とんぼ」を手始めに作成してみた。ホームページの作成の要領で本文をコピー&ペーストする。最後に「奥付」を書き「本の公開設定」欄に必要事項を入力すれば終了だ。無料公開欄にチェックを入れる。これで完了した。
 次にいよいよ『三木露風評伝』だ。ログインして「本を作る」をクリック、「ページの設定」をする。このページというのは紙の本のページとは異なり、内容の区切りのようなもので、1ページは「はじめに」、2ページは「目次」、3ページは「第1章 生い立ち」となって、29ページが「参考文献」となる。したがって本のページに当るものはない。だから紙の本の「索引」は作ることができない。
 今度も草稿からコピー&ペーストするのだが、読み直して見ると結構意に添わない個所も出てきて、案外手間取った。1月7日起稿して脱稿が5月27日だった。紙の本にしてB6版250ページほど。もちろん諸々の雑用の合間の作業である。何枚か画像を挿入したかったが、それは紙の本の出版の際に残しておいた。
 公開設定を無料にするか有料にするか迷ったが、どうせ人気のない詩人のことだから、アクセスは期待できないだろう、それなら有料にしてみようと思い、300円と記した。紙の本の場合は、印税は10パーセントくらいだろう。電子書籍は70パーセントだ。
 電子書籍を作ることの魅了は何だろう。なんといっても製作費だ。過去の経験から半々としても何十万円かかるだろう。次に販売流通の問題がある。店頭に並ぶまではかなりの隘路を通らなければならない。書店に並ぶ期間も短い。返品を抱えた出版社としては在庫管理が大変だ。それである時期が来れば絶版にして、清算する。これも経験済みだ。
 電子書籍にはそうした心配は無用だ。それにいつでも添削改訂が可能だ。
 そうはいっても『三木露風評伝』を一体誰が読んでくれるだろうかと考えると、躊躇せざるを得なかったのも事実だ。しかし、「あなたの本は決して多くの人びとに読まれないかもしれない。だが世界には、あなたの本を読みたい人が必ずいる」という『電子書籍奮戦記』の激励の言葉が迷いを払しょくしてくれた。
 パブーには立ち読みのコーナーがある。もし関心を持たれる方がいればアクセスして頂ければ幸いである。